「アセスメント・イップス」の恐怖
2025/07/01
こんにちは!
いよいよ7月です。
今年も折り返しです。
6月から酷暑が続きます。
職員からも暑さゆえか疲労感を感じます。
疲労...そこから今日は「アセスメント・イップス」について書きます。
実は題名の「アセスメント・イップス」という言葉は私が作りました。
なので世間一般にあるものではありません。
でも、もしかしたら似たような状況になったケアマネージャーはいるのではないかと思います。
他社のケアマネに会った時に「この人疲れているなぁ。」と思うことが結構あります。
長期間同じ地域で働いているいわば手練れのような経験豊富なケアマネージャーなのに...。
彼らはもしかすると「アセスメント・イップス」なのかもしれません。
アセスメント・イップスについて書く前にまずアセスメントとは何かとその重要性について書きます。
アセスメントとは、利用者に聞き取りを行うことです。
これは重要な仕事で、利用者に対応するのにアセスメントがしっかりしているか否かで支援に大きな差が出てきます。
例えば、認知症でいつも怒っているおじいさんがいるとします。
この一部分だけを切り取れば、この方はただの「いつも怒っているジジイ」(言い方悪い!)です。
あまりいい印象ではないですよね。
ここでケアマージャーがアセスメントを行います。
どこの出身ですか?仕事は何だったのか?家族はどんな感じか?趣味は何か?
体の動きはどうか?病気は?
これからどのように生きていきたいのか?
こういうことを聞くのがアセスメントです。
東北地方出身で集団就職で東京に来て、自動車の工場で苦労して働いて35歳の時に今の家を建てた。
妻との間に3人の子供をもうけられ、それぞれ独立して孫が8人、曾孫が2人いる。
趣味は竹細工で子供に教えるのが好きでよく公民館で子供を集めて竹とんぼづくりを教えていた。
84歳の時に骨折し脚が悪くなって、今は一人で公民館にいけなくなってしまった。
家にいる時間が増えると落ち込みがちになり、妻に対して怒りっぽくなってしまった。
それでも孫や曾孫が来たときは機嫌がよくその時はよく笑っている。
※特定のモデルはいません。
アセスメントをしたところ、こんな方だったとすると、ちょっとただの「いつも怒っているジジイ」とは言いにくくなりますよね。
私が「これからやりたいことはありますか?」と意向を聞くと
「また子供たちに竹細工を教えたいなあ。」と言います。
アセスメントでよい記憶やイメージを呼び起こして、こういう前向きな意向が聞き出せれば最高です。
かなり違いますよね、「いつも怒っているジジイ」と「子供たちに竹細工を教えたいと思っているおじいさん」
実は同一人物なんですが、印象が全然違う。
私の対応だってきっと変わってきます。
「あの竹細工、作るの大変だったでしょう?」
「とても素敵な作品ですね。」
「リハビリ頑張って、また子供たちに竹細工教えましょうよ。」
こんな言い方をすれば、きっと私とも気持ちよく話をしてくれるでしょう。
またリハビリを行うにも「また竹細工をする」という明確な目的ができて、ご本人のやる気も引き出せます!
このようにアセスメントはケアマネージャーの支援で非常に(最も、と言っても過言ではない)重要なスキルです。
ところが、私は数年前にアセスメント・イップスになったことがあります。
イップスとはスポーツや演奏などの特定の動作を、突然、自分の思い通りにできなくなる状態を指します。
心理的な要因、特にプレッシャーやストレスが影響し、筋肉の動きが制御できなくなることが原因の一つです。
ゴルフ、野球、テニス、音楽演奏など、様々な分野で見られる現象です。
ゴルフだと(例えば、この1打が入るか入らないかで勝敗が決まる場面のプレッシャーで)どうしてもパターが打てない、というような状況です。
YouTubeで検索すると出てきますが、あれは地獄絵図です。
ケアマネージャーにイップスが起こるかどうかはわからないのですが、あれは「イップス」としか表現できない状況でした。
引継ぎと新人職員の同行訪問をひたすらしていた時期です。
新人に見せるために私自ら、引継ぎと新規のすべての利用者にアセスメントをし直しました。
月20人くらいを2か月以上続けましたので40人くらいにアセスメントを行ったと思います。
ある日、とても感じのいいご夫婦でお二人とも要介護1くらいの方々のアセスメントをする場面だったと思います。
いつものようにアセスメントをしようとすると
「聞きたくない。」と頭の中でもう一人の自分が言っている感じがしました。
他人の人生を、そんなに多く頭に入れたくない。そんな感じがしました。
しかもご夫婦2人分なんて絶対聞きたくない!
仕事なので嫌なわけではないのです。
しかも相手はにこにこした感じの良いご夫婦。
それなのに、まるで目の前に巨大な岩壁が立ちふさがっているように感じました。
支援の場でそんなことを言っている場合ではないので、平静を装いアセスメントを始めましたが動悸と汗が止まりませんでした。
夫のアセスメントを終えて妻のアセスメントをしようとしたとき、眩暈までしてきました。
それでも何とか最低限の聞き取りを行い早々にその場を終わらせました。
帰路、心から震撼しました。
怖い。できない。他人の人生を聞きたくない。
そして仲間の職員に助けを求めました。
「しばらくアセスメントは無理です。」と。
みんな理解して代わりに新規に行ってくれて、1か月くらいそうしているうちに私のその症状は薄まってきました。
考えてみると、私は2011年から管理者をしていて初回訪問は自分で行ったりアセスメントをする機会がほかのケアマネに比べ圧倒的に多かったケアマネ人生でした。
職員も10人近くいることが10年近く続いているので、相談数、お会いした利用者数や関係者数もけた違いに多かった。
その弊害か、私は人の名前が覚えられなかったり、自分の頭の中の他人の情報の、ハードディスクのような記憶の部分が満杯になっているのを感じます。
その結果「アセスメント・イップス」になったのだと思います。
人の人生を聞きたくない。苦しい。怖い。
しかしこれではケアマネージャーは務まりません。
私はその時、仲間が助けてくれたのでラッキーでした。
一人ケアマネだったら終わっていたと思います。
何が言いたいかというと、ケアマネージャーにアセスメント・イップスになってほしくない。ということです。
これは自社のケアマネは当然ですが、他社のケアマネにも言いたいです。
人手不足の業界ですから助け合わないと。
そのためには、まずは自分自身が「アセスメント・イップス」になっていないかモニタリングすることです。
なっていると感じたら「休息」これしかありません。
とにかく休む。一日でも二日でも。
できるならば少しゆっくり仕事ができるように。
当社ではこの怖い「アセスメント・イップス」にならないように対策をしています。
それは「夏季休暇」です。
7月から9月の間に2分割まで可能な7日間の休みを夏季休暇として出しています。
休みまでに計画的に仕事をこなし、職員は協力し合って休みの職員の分を補う。
補ってもらい休めた職員はその分ほかの職員を助けるというように仲間同士で助け合うようにします。
最悪そのケアマネ本人にしかわからない問題は、LINE等で連絡は行くことにはなりますが、可能な限り減らそうねと会議等で話しています。
この夏季休暇が生み出すもの...それは「希望」です。
土日の休みを含めると結構多く休めます。
例えば7月に夏季休暇3日+土日の5日連続休み、9月に夏季休暇4日+土日の6日連続休み、こうするとかなり休めます。
「もうちょっと頑張れば休める!」「休みは何をしようか?」という希望が生まれてきます。
私も今年はしっかり休暇を取って充電したいと思います。
私が大好きな場所へ行こうと思っています。
それを希望に、暑い7月、アセスメント・イップスにならないように今は頑張ります。
最後に、「希望」に関する私の好きな言葉を。
「Hope is good thing maybe the best of things.
And no good thing ever dies.」
(希望はいいものだ。多分最高のものなのだ。そして素晴らしいものは決して失われない。)
ケアマネージャーの皆さん、適度に休息をして、希望をもって、アセスメント・イップスにならないようにしましょう!
※今は私はアセスメント・イップスからは回復しています。
時々新規の方などが多数連続するとちょっと苦しい、と感じるときはありますがその時は仲間に「きつい。」と正直に言って助けてもらっています。
アセスメントは重要だしむしろ好きなので、嫌ということはありません。大丈夫です!
文:池端祥一郎
求人 調布 三鷹 ケアマネ 介護支援専門員


