実直な男の満面の笑顔
2026/11/04
11月を迎えました。
今日は暑かったですが急に寒いですね。
一か月前は半袖でも暑かったのに、一気に寒くなってきています。
そういえば去年もそうだったような気がする。
ホームケア野川は10月で決算の時期なので、必要な経理資料をすべて2日に送ったので私はひとまず安心です。
この作業が終わったので私はやり切った感があり、なにもやりたくなくなるいつもの11月が来ました。
私の友人で実直な男がいます。
彼は大学卒業後、22歳で就職したとすると48歳まで26年間ずっと真面目に同じ会社で働いてきました。
一部上場企業ですが、異動も多く時に彼は北関東に、時に地元に、時に隣県にという感じでなかなか定住できず、仲間の飲み会にも参加できたりできなかったりでした。
彼は真面目ですが結婚もしていないし、趣味もあまりなさそうなので話題が豊富ではありません。
飲み会でも、場の隅の方に座り、大人しい人という印象です。
唯一雄弁に語ったのは、勤続25周年の社員に会社から与えられる北海道旅行の話題で、行く前と行った後の飲み会の後は雄弁でしたが、そのあとはまた元の大人しい彼に戻りました。
ただ、とても実直で真面目な男です。
先日地元の仲間の飲み会があり、私は合流が少し遅れたのですが、到着するとなぜか彼が話題の中心になっていて満面の笑顔でビールを飲んでいました。
入った瞬間、なんかいつもと違う、明るい、まるで彼にだけ陽が差しているようななにかオーラみたいなものを感じました。
どうしたのかと聞くと、長年働いた会社を9月末で辞めたそうです。
そういう判断をしない実直な男だと思っていたので私は少し驚きました。
会社に対しては以前から不満があったそうです。
社会構造的な問題と、今まで他業種だった業種が強力すぎるライバルになってきて、業界4位の彼の会社は非常に厳しい状況にあるそうです。
さらに関東どころか日本全国規模で異動させられることになり、嫌だと言ったところ退職になったそうです。
9月に言われて9月中に退職し10月から職業訓練校に通い始めたそうです。
それから1か月でフォークリフトの免許を取ったり、電気工事士2種の受験をしたり「忙しいけれどもやったことがないことをやるのは楽しい。」と話していました。
彼の話は試験の話やフォークリフトの話を2時間ずっと止まらず、お店自慢のせっかくの焼き鳥が冷めてしまうまで、ずーっと話していました。
まるで今まで大人しかった26年間のすべて吐き出すように彼が話すのを見ていて、私は微笑ましかったです。
話したいなら好きなだけ話せばいいよ、と思い私はその夜ケアマネのように聞き役に徹していました。
彼は「仕事を辞めてすっきりした。」と話していました。
私は「実直だし、経歴もきれいだからいくらでも仕事はあるよ。」と話しました。
これからAIはホワイトカラーからどんどん仕事を奪っていきますが、電気工事やフォークリフトはAIにできないので、かえって仕事になるかもしれません。
まだこれからいくつかの資格を取るそうですし、これは社会人後半を迎えるいいメンテナンスかもしれません。
何より思ったのは、彼の満面の笑顔が素晴らしかったことです!
その日の秋の土曜日の空のように晴れやかでとてもいい笑顔でした。
わからないですけどね、彼が内心どう思っているかは...。
翌日は秋葉原に電気工事士の試験で使う工具を買いに行く、と張り切っていました。
「アマゾンで買えばいいじゃん。」と私は言いましたが真面目な彼は「手で持ってみないとわからない!」と話していました。
考えてみると私は、仕事を辞める時が何度かありましたが、いつもそこまですっきりした気分ではなかったです。
残念だったり、寂しかったり、不安だったりしていました。
20代の時に師匠と立ち上げた会社を辞めた時は「自分には何にもなくなってしまったな。」と思いました。
彼のように気分爽快とは程遠かったです。
だから思い切った行動をしてすっきりして新生活に希望を持ている彼が少しうらやましかったです。
友人はいい笑顔になれてそれで多分よかったのですが、私は経営者として考えたとき悲しい話だと思いました。
友人の笑顔が「明」「陽」なら、会社は「暗」「陰」とコントラストははっきりしています。
会社が構造的にうまくいかない時期が来て、忠実といえる勤続26年の実直な社員に無理な辞令を出さざるを得ない。
その社員は前から不満を抱えていて、あっさりやめて次の仕事に希望を持っている状態です。
自分の会社がそうならないようにしないといけないな、と強く思いました。
会社を辞めてすっきりされたくない。
どうしたら職員の不満を減らせるか?
どうしたら構造的な問題を抱えないか?
構造的な問題を抱えるとしたらどのような状態になったときか?
それにどう対処するべきか?
できれば辞めたいと思われない会社にしたいです。
それは難しいことですけどね。
ホームケア野川は最近2年間以上退職者が出ていなくて安定しています。
10月で決算の時期ですが好調と思われます。
今年は過去最大の職員数になりました。
おそらくこの好調は数年は続くでしょう。
しかしホームケア野川に大きな問題がない今だからこそ、会社をより強く、弱点を減らしよくしていくことを考えていかなくてはいけないと私は思いました。
経営者に課せられた大きい責務だと、改めて思った出来事でした。
文:池端祥一郎

